「スキーマ」が、つらい気分、悲しみ・寂しさ・怒り の元凶!|ワークで「頑固な信念・価値基準」を洗い出す

心理学

悲しみ、寂しさ、怒り…。誰からも愛されず、理解もされない。私にはどうしようもない…。「つらい気分」や、ネガティブな「自動思考」をなんとかしたい、と思っていませんか?

実は、あなたが普段気づいていない「信念・価値基準 = スキーマ」を知ることが、対処の第一歩になります。

なぜなら、つらい気分の元凶は「スキーマ」で、これが「自動思考」をつくり出し、さらには「ネガティブ感情」を起こさせるということが、「心理学」で明らかになっているからです。

「スキーマ」をポジティブなものに書き換えていけば、「自動思考」や「感情」もポジティブになっていくのです。

この記事では、頑固な信念・価値基準、「スキーマ」についてご紹介します。

記事を読み終えると、ご自分の「ネガティブな自動思考」をコントロールし、「つらい気分、悲しみ・寂しさ・怒り」を癒やしていく第一歩を踏み出せるようになります。

スキーマ

スキーマとは

※本稿では、引用部分を〈 〉で表しています。

「スキーマ」とは、「自動思考」の背後にある信念・価値基準のようなものです。
下図のような関係になっています。[うつ病の認知の歪みモデル

「うつ病の症状」とありますが、誰でももっている「つらい気分」と考えて下さい。

なお、自動思考については、下記記事をご覧ください。

次に、「スキーマ」のより厳密的な定義を見てみましょう。

「スキーマ」は、認知心理学の用語ですが、認知行動療法の発展型のひとつ「スキーマ療法」では、「早期不適応スキーマ」と呼ばれます。(同じものと考えていいです)

子供時代に確立された、人生の全体に繰り返される、自己敗北的な感情的・認知的パターンである。
それらは過去の傷、悲劇、恐怖、虐待、ネグレクト、安全性のニーズの非充足、放棄、一般に正常な人間の愛情の欠如などなど、感情的な思い出で構成されている。
スキーマには、それら感情的記憶に関連する、身体感覚も含まれ得る。[改行はサイト管理者]

Wikipedia 早期不適応スキーマ

少し難しいですね。分かりやすい解説をご紹介します。

スキーマは、過去の経験などからつくられた価値観、評価基準。生きかたのルールともいえます。
「いつも失敗ばかり」といった自動思考が浮かぶ人は、「自分は無能だ」というスキーマを抱えています。
「悪口を言われた」「また非難された」と感じる人には、「自分には愛される価値がない」というスキーマがあります。
どんなスキーマにも、理由があります。
幼少期の家族関係などでつらい思いをした人は、「自分は愛されない」「人は自分を傷つける」と信じることで、心を守ろうとします。
心が警告音を発して、傷つくような経験を回避させるのです。[改行はサイト管理者]

今日から使える 認知行動療法』P13

幼少期に、「親からひどく叱られた、虐待された、放置された」など、つらい経験をしたひとは、再びそのような「痛み」を経験しないように、同じような目に遭うことを回避するための「信念、価値基準 = スキーマ」を用意している、ということです。

自分にとって危なそうな状況(上司から注意される、彼氏がほかの男性を話題にする、など)に遭遇すると、「スキーマ」が気づかないうちに発動します(心が警告音を発します)。

そして、スキーマ → 自動思考 という流れが繰り返されるのです。

  1. スキーマ:「自分には愛される価値がない」
  2. 自動思考:「悪口を言われた」「また非難された」

スキーマの38パターン(JIBT-R)

別稿では、ふだん意識できていない「自動思考」をピックアップしてみることをテーマにしましたが、さらに奥深くに隠れている「スキーマ」は、それ以上に気づきにくいものです。

そこで、ツールの登場です!

JIBT-R(Japanese Irrational Belief Test-Revised)というツールです。
(直訳は「日本人の不合理な信念テスト-改訂版」)

東京家政大学大学院教授で、臨床心理士、博士(人間科学)である福井至先生が開発したもので、不合理な信念(= スキーマ)の典型的な38パターンを質問紙のかたちに抽出・整理し、被験者にとって重大なスキーマを測定するツールです。

先生の著書『今日から使える 認知行動療法』から、少しだけ紹介させて頂きます。

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1 いつもめざましいおこないをしなくてはならない。
2 私はすべての点で有能でなければならない。
3 私はつねに業績を上げなければならない。
4 いつも申し分ない行為をしなくてはならない。
5 私はいつも頭がよく働かなければならない。
6 ものごとは完全無欠に成し遂げねばならない。
・・・

今日から使える 認知行動療法』P139

このような文が38個、巻末付録の「別冊ワークブック」に載っています。

38のスキーマに対して、自分でどう思うか、1〜5の点数をつけていきます。

  • 1 全くそう思っていなかった
  • 2 あまりそう思っていなかった
  • 3 どちらともいえない
  • 4 かなりそう思っていた
  • 5 非常にそう思っていた

(本書には書いてありませんが)38のスキーマには、グループ分けがされています。

  • 自己期待(1〜10)
  • 依存(11〜19)
  • 問題回避(20〜26)
  • 外的無力感(27〜33)
  • 内的無力感(34〜38)

「4」「5」という点数をつけた項目は、「非適応的スキーマ」と呼ばれます。
あなたの心に重大な影響を及ぼしている「信念・価値基準」ということになります。

私のワーク結果1(スキーマのピックアップ)

私もじっさいにやってみました。

その結果、「4」をつけた項目が6つありました。

  • 12 相談できる人がつねにいないと困る。(依存)
  • 19 戦争が起こったら私の人生はおしまいだ。(依存)
  • 22 リーダーなどを引き受けるとろくなことはない。(問題回避)
  • 27 子どもの頃の不幸せなできごとがいまも尾を引いている。(外的無力感)
  • 31 かつてあったことが自分の人生に大きな影響を与えた。(外的無力感)
  • 38 大きな災難に出遭ったら精神的に混乱するのが当たり前だ。(内的無力感)

です。

私のワーク結果2(スキーマの書き換え)

つぎに、これらのスキーマを、「柔軟で生きやすいスキーマ」に書き換えるワークです。

書き換えのヒントとしては、次のようなものがあります。

  • 断定・限定(◯◯でなければならない、つねに、すべて…)を、「柔軟な文」(◯◯だと嬉しい、〇〇に越したことはない)に変える。
  • 過去の経験事実、現状、将来予測を客観的に見てみる。
  • 全か無か、行き過ぎた一般化、心のフィルター(悪い面のみ着目)、結論の飛躍、拡大・過小解釈、感情の理由づけ(ネガティブ感情のみで結論づけ)など、「認知のゆがみ」も参考にする。[https://nari-tai.com/automatic_thoughts
  • ものごとを多面的に捉えると、新しいスキーマは元の文より「長い文章」になる。

以下、書き換えワークの結果です。

12 相談できる人がつねにいないと困る。
⇒ 今までの人生で、相談相手がつねにいた訳ではないが、何とかなってきた。むしろ、困ったことが起きると、かならず、相談相手が現れているので、心配する必要はない。

19 戦争が起こったら私の人生はおしまいだ。
⇒ 世界情勢を客観的にみると、戦争が起きる可能性はとても低い。あり得ないリスクを想定するメリットはないし、戦争がない世の中をつくる社会的事業に関わっていきたい。

22 リーダーなどを引き受けるとろくなことはない。
⇒ リーダーを引き受けて、苦しい経験も、素晴らしい経験もしてきた。これから引き受ける場合は、私の人生経験・知見を活かしたリーダーシップを発揮して、自分も他人も成長できるようにしていくつもり。

27 子どもの頃の不幸せなできごとがいまも尾を引いている。
⇒ 同じような幼児体験をしても、その後の人生はひとによって異なる。つまり、出来事そのものではなく、「出来事の解釈」が問題。「愛情欠損」による空虚感・欠乏感で長いこと苦しんできたが、「欠損を埋める代償行為」に勤しんだおかけで、仕事や人間関係で成果も残した、と解釈しよう。そして、「欠損」を抱えている自分を「認め・受け入れた」ので、これからは、自分にも他人にも「愛」を与えられる人生を歩んでいこう。

31 かつてあったことが自分の人生に大きな影響を与えた。
⇒ 影響は、ネガティブ・ポジティブ両方あるし、そもそも「過去体験が人生に影響する」のは、誰にとってもあたり前のこと。だから、こうした信念は意味がない。

38 大きな災難に出遭ったら精神的に混乱するのが当たり前だ。
⇒ そういう人もいるし、そうでない人もいる。私の場合は、何度も、大きな災難をきっかけに学び、成長してきた。だからこれからも、災難から学び、成長していきたい。


スキーマを見ると、初めは、「どうしようもないよね…」という印象があると思いますが、手を動かしてみると、いろいろなアイデアが湧いてきて、意外ときちっとした文章が作れるものです。

あなたもぜひ、ご自分でワークしてみてください!

なお、全38スキーマ、グループ分けについては、下記論文で読むことができます。『JIBT と DACS および DASI の改訂版の開発』福井至 著
東京家政大学 臨床相談センター紀要 第3集 p.29〜40, 2003

スキーマモード

本稿の冒頭で、認知行動療法の発展型のひとつ「スキーマ療法」について触れましたが、この療法には、2つの特徴があります。

  1. 幼少期のつらい体験でつくられた「早期不適応スキーマ」に焦点をあてる。
  2. 「現在、どんなスキーマが活性化しているか」、つまり、「スキーマは今、どんなモードにあるか」に注目する。

この、スキーマの活性化状態を、「スキーマモード」といいます。

「Wikipedia スキーマモード」には、〈4つのカテゴリにグループ化された、10のスキーマモード〉が掲載されています。

  1. 子供モード(Child)
  • 傷ついた子供モード(Abandoned Child )
  • 怒っている子供モード(Angry Child)
  • 衝動的な子供モード(Impulsive Child)
  • 幸せな子供モード(Happy Child)
  1. 不適応的コーピングモード(Dysfunctional Coping)
  • 従順な降伏者モード(Compliant Surrenderer)
  • 分離可能な防具モード(Detached Protector)
  • 過剰補償モード(Overcompensator)
  1. 機能不全の親モード(Dysfunctional Parent)
  • 懲罰的な親モード(Punitive Parent)
  • 要求的な親モード(Demanding Parent)
  1. 健康な大人モード(Healthy Adult)

「子供モード」は、「子供の自分」を代弁するようなスキーマ。
「幸せな子供モード」以外のモードにあると、「幼少期のつらい感情」が湧き起こります。

自分のスキーマモードを分析して、「ヘルシーアダルトモード(健康な大人モード)」が多くを占めるようであれば、「適応的な認知」ができる状態、つまり、「心がつらくない」状態であるといえます。

スキーマモードを分析するツールとして、「スキーマモード質問紙(SMI)」というものがあります。(SMI とは、Schema Mode Inventory の略)

124のスキーマが質問項目として並んでいて、それに対して、「これまで自分がどういう状態であったか」を答えていくようになっています。
福井先生の著書『今日から使える 認知行動療法』から、少しだけ紹介させて頂きます。

1 私は周囲に自分を尊敬させるために、他人が私をこき使うことを許さない。
2 私は愛され、周囲から受け入れられている。
3 私は楽しいことをするに値しない人間なので、楽しまないようにしている。
4 私は根本的に欠点や欠陥があるような気がする。
5 私は自分に罰を与えるために、自分を衝動的に傷つける。
6 私はどうしたらよいのかわからない。
・・・

今日から使える 認知行動療法』P151

全124項目は、『今日から使える 認知行動療法 書き込み式ワークブック』P24〜28 にあります。ぜひ、ご自分でワークしてみてください!

オリジナル質問紙の発行元は、下記になります。
http://www.schematherapy.com/id55.htm

私のワーク結果3(スキーマモード)

124項目すべてに回答・採点した後、スキーマモードごとに採点を集計し、「平均値」(下図の青い数値)を出します。

そして、その「平均値」を、あらかじめ用意された表に「マッピング」します。(下図の☑)

SMI の採点・集計結果

「高い」周辺にマッピングされたスキーマモードが、「要注意」ということになります。

私の場合、「チャイルドモード」が軒並み、「中程度〜高い」に分布しているので、「幼少期のつらい感情」が湧き起こりやすい状態になっていることが分かります。

※なお、上図の(『今日から使える 認知行動療法』に掲載されている)スキーマモードは、「Wikipedia スキーマモード」と少し異なっています。

スキーマモードのケア

さて、上のワークで、「どのスキーマモードが主流になっているか」が分かりました。

次は、心のつらさをケアしていきます。そのやり方を少し引用します。

安心感を得られないままでいたり、傷ついて怒ったままでいる、心のなかの子どもに、安心感を与えましょう。モードの由来となった、つらい記憶イメージを書き換える、イメージエクササイズです。
イメージエクササイズでは、幼少期のつらい感情を、頭のなかでもう一度体験します。「おもらししたとき、母に叱責された」など、どんな内容でもかまいません。そのときの恥、悲しみなどの感情をもう一度感じられれば十分です。
このときに、「やさしく抱き上げて、”大丈夫よ” と言ってほしかった」など、子どもの自分にどんなケアが必要だったか、考えてみましょう。そして、ヘルシーアダルトモードのあなたがその役割を担い、つらい体験を書き換えます。
このようなイメージの修正により、安心感やポジティブな感情をもてるようになります。

今日から使える 認知行動療法』P152

イメージエクササイズは、以下の要領で行います。

チャイルドモードとの対話 子ども時代の自分に対して、イメージのなかで語りかけ、欲求、感情を満たしてあげる。「抱き締める」「手を握る」などの関わりも有効。
ペアレントモードとの対話 チャイルドモードの自分を罰したり、過度な要求をするペアレントモードに、「もう守ろうとしてくれなくて大丈夫」と説明し、理解を促す。
ヘルシーアダルトモードとの対話 今後の核となるモード。欲求を自分で満たし、できごとや感情を落ち着いて受け入れられるようになってきたことを、ほめて励ます。
今日から使える 認知行動療法』P153 より[表組みはサイト管理者]

まとめ

本記事では、「自動思考」の背後にある頑固な信念・価値基準、「スキーマ」について紹介してきました。

ご自分が抱えている「スキーマ」を洗い出し、「どのスキーマが強くなっているか」が分かると、「つらい気分、ネガティブ感情」を癒やしていくことができるようになります。

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