つらい気分・感情は「自動思考」がつくり出す!|かんたんなワークで「思考のクセ」を探ってみよう

心理学

悲しみ、寂しさ、怒り…。「つらい気分」や「ネガティブ感情」をなんとかしたい、と思っていませんか?

実は、あなたが普段気づいていない「自動思考」を改善していけば、「ネガティブ感情」は起きなくなります。

なぜなら、「感情」の背後には「自動思考」がある、ということが「心理学」で明らかになっているからです。

「自動思考」をポジティブなものに変えていけば、「感情」もポジティブになっていくのです。

この記事では、ネガティブな感情を作り出している「自動思考」についてご紹介します。

記事を読み終えると、つらい気分やネガティブ感情をコントロールする第一歩を踏み出せるようになります。

認知療法と認知行動療法

※本稿では、引用部分を〈 〉で表しています。

「自動思考(automatic thoughts)」とは、アメリカの精神科医アーロン・ベックが1960年代に「認知療法(Cognitive Therapy)」を提唱したなかで使われた用語です。

ベックは、〈人が成長するにつれ固定的なスキーマが形成され、それに基づいて歪んだ思考方法や考えが自然に浮かぶ自動思考が起こって〉いると考えました。[Wikipedia 認知療法

「認知療法」は、そのような考え(= 認知)の歪みに着目し、認知を修正していくことによって「つらい気分などの症状」を改善するための心理療法です。

「スキーマ」とは、「自動思考」の背後にある信念・価値基準のようなものです。下図のような関係になっています。[うつ病の認知の歪みモデル より]

一方、「認知行動療法」とは、1990年代頃に登場した療法で、「認知療法」や「行動療法」などが合体したものです。

それぞれの療法の位置づけについては、別稿に載せた下図をご覧ください。

心理療法の種類(マッピング)

自動思考

自動思考とは

自動思考とは、〈状況に対応して非常にすばやく、自分の意志とは関係なく自動的に湧き出る思考〉を表しています。[Wikipedia 自動思考

上で触れたように、もともとは「認知療法」に登場した用語ですが、「認知行動療法」でも盛んにつかわれます。

下図「認知行動療法(CBT)の基本モデル」の「考え / 思考 / 認知」に当たる部分です。(詳細は、別稿参照)

認知行動療法(CBT)の基本モデル

認知行動療法は、「人の感情や行動(そして身体は)、状況そのものでなく、状況に対する解釈の仕方によって影響を受ける」という認知モデルに基づく]。
例えば、やるべきことがありすぎるとき、人は「これらの全てを一気に終わらせるのは無理だ」という自動思考が生じるかもしれない。
その自動思考が浮かぶと、無力感や投げやりな態度になってしまうだろう。
また倦怠感や頭痛を覚えるかもしれない。
しかし、このような自動思考が現実的であるかを検討し、「必要なことから少しずつやれば、いつかは必ず終わる。いままでもやってきた」と考えを修正することができれば、少しずつやる気が回復するだろう。[改行はサイト管理者]

Wikipedia 自動思考

たとえば、「今日はテストの日!」という状況が発生したとします。

すると、上図のように、

  1. 「ミスするに決まってる。」といった「考え」が生まれ、
  2. 「めちゃくちゃ不安…」な「感情」が引き起こされ、
  3. 「お腹が痛い」という「身体反応」が起き、
  4. 「ズル休み」という「行動」に至ります。

「ミスするに決まってる。」の部分が、「自動思考」です。

これを、「少しくらいミスしたって大丈夫」「ミスなんて当たり前」などの形に変えていけば、「感情」「身体反応」「行動」もポジティブなものに変わっていくわけですね。

さて、「自動思考」は誰にでも生じますが、「じっくり考える思考」とは違って、「瞬間的に湧き上がる」ものです。

そのため、「自動思考」には、気づかないことが多いのです。

でも、自動思考につづいて起こる「感情」「身体反応」「行動」には気づくことができます。
たとえば、「感情や気分」がネガティブに振れたとき、それを指標にして、自分にどのような「自動思考」が生じているかに気づくことが、認知行動療法の目標の一つになります。

そして、「自動思考」に気づくことができれば、今度は、それを改善していけば、「ネガティブ感情/気分」が起きないようにすることができるわけです。

自動思考の50パターン(DACS)

「つらい気分」になったとき、それを作り出している「自動思考」が必ずあります。

たとえば、上の例でいうなら、テスト当日の朝、「めちゃくちゃ不安…な気分」は、「ミスするに決まってる。という自動思考」が作り出しているものです。

あなたがどんな「自動思考」を抱いているか、ご自分が「つらい気分」になったときの状況を思い浮かべて、イメージしてみて下さい。
でも、すぐには思い出せない…ですよね?

大丈夫です。いいツールがあります!
DACS(Depression and Anxiety Cognition Scale)というツールです。
(直訳は「うつ病・不安の認知尺度」)

東京家政大学大学院教授で、臨床心理士、博士(人間科学)である福井至先生が開発したもので、典型的な自動思考の50パターンを統計学的に抽出・整理したツールです。

先生の著書『今日から使える 認知行動療法』から、少しだけ紹介させて頂きます。

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1 私にはこの先うれしいことがないだろう。
2 私はこの先幸せになれないだろう。
3 私にはこの先よいことがないだろう。
4 私の生活はこの先さびしいものになるだろう。
5 私は幸せになれないだろう。
6 私はこの先きっと孤独になるだろう。
7 この先の私の生活は充実感のないものになるだろう。
8 この先の私の生活は楽しくないものになるだろう。
・・・

今日から使える 認知行動療法』P55

このような文が50個、巻末付録の「別冊ワークブック」に載っています。
50の思考パターンに対して、自分でどう思うか、1〜5の点数をつけていきます。

  • 1 全くそう思っていなかった
  • 2 あまりそう思っていなかった
  • 3 どちらともいえない
  • 4 かなりそう思っていた
  • 5 非常にそう思っていた

(本書には書いてありませんが)50の項目には、グループ分けがされています。

  • 将来否定(1〜10)
  • 脅威・嫌悪状況予測(11〜20)
  • 自己否定(21〜30)
  • 過去・現在否定(31〜40)
  • 状況の脅威度・嫌悪度(41〜50)

質問1〜40で「4」「5」、質問41〜50で「5」という点数をつけた項目は、「非適応的思考」と呼ばれます。
あなたにとって、〈より心が揺れ動くホットな思考〉ということになります。[P54]

私のワーク結果(自動思考のピックアップ)

私もじっさいにやってみました。

その結果、質問1〜40で「4」をつけた項目が3つありました。

  • 15 私にはこの先思い通りにならないことがたくさんあるだろう。
  • 36 私は他人を傷つけてしまう。
  • 40 私は身に覚えのないことで責められている。

です。
質問41〜50で「5」という点数をつけた項目はありませんでした。

が、少し前(2ヶ月ほど前)の私であれば、下記にも「4」をつけただろうと思います。

  • 1 私にはこの先うれしいことがないだろう。
  • 7 この先の私の生活は充実感のないものになるだろう。
  • 8 この先の私の生活は楽しくないものになるだろう。
  • 19 私はこの先目標を見失うことがあるだろう。
  • 20 私はこの先人とたびたびけんかすることになるだろう。

ある事件をきっかけに、「自分と向き合う」決心をし、今年の元旦からこのサイトを始めたのですが、(執筆のためにも)心理学を真剣に学んでいる効果は、かなり出ていると考えていいようです。(5項目もネガティブな自動思考が減っているのですから…)

あなたもぜひ、ご自分でワークしてみてください!

なお、全50項目、グループ分けについては、下記論文で読むことができます。

Depression and Anxiety Cognition Scale(DACS)の開発―抑うつと不安の認知行動モデルの構築に向けて―』福井至 著
Jap. J. Behav. Ther., 24, 2, 1998. 行動療法研究, 第24巻, 第2号, 57-70頁

認知のゆがみ

さて、下図(再掲)にあるように、「自動思考」には偏りがあります。

これを、「認知のゆがみ」(推論の誤り)といい、アーロン・ベックが考え方の基礎を築き、その弟子のデビッド・D・バーンズが10パターンに分類しました。
「Wikipedia 認知の歪み」から転載します。

  • 全か無かの思考
  • 行き過ぎた一般化
  • 心のフィルター
  • マイナス思考
  • 結論の飛躍
  • 拡大解釈、過小解釈
  • 感情の理由づけ
  • ~すべき思考
  • レッテル貼り
  • 誤った自己責任化(個人化)

下表は、同じく「Wikipedia 認知の歪み」から、各パターンの説明を転載したものです(多少、簡略化してあります)。

全か無かの思考 グレーがなく、物事の全てを白か黒かで認識するという、誤った二分法を用いること。オール・オア・ナッシング(all-or-nothing)であり、少しでもミスがあれば完全な失敗だと考える。
行き過ぎた一般化 経験や根拠が不十分なまま早まった一般化を下すこと。ひとつの事例や、単一の証拠を元に、非常に幅広く一般化した結論を下すことである。たった一回の問題発生だけで、その問題は何度も繰り返すと結論付けてしまう。
心のフィルター 物事全体のうち、悪い部分のほうへ目が行ってしまい、良い部分が除外されてしまうこと。
マイナス思考 上手くいったら「これはまぐれだ」と思い、上手くいかなかったら「やっぱりそうなんだ」と考える。良い事があったことを無視してしまうばかりか、それを悪い方にすり替えてしまう。
結論の飛躍 「心の読みすぎ」と「先読みの誤り」の二種類が存在。①心の読みすぎ:他人の行動や非言語的コミュニケーションから、ネガティブな可能性を推測すること。論理的に起こりうる最悪のケースを推測し、その予防措置を取ったりする。②先読みの誤り:物事が悪い結果をもたらすと推測すること。悲劇的な結論に一足先にジャンプしてしまう。
拡大解釈、過小解釈 失敗、弱み、脅威について、実際よりも過大に受け取ったり、一方で成功、強み、チャンスについて実際よりも過小に考えている。
感情の理由づけ 単なる感情のみを根拠として、自分の考えが正しいと結論を下すこと。ネガティブな感情は、物事の真実を覆い隠し、人間に、その感情にリンクした考えのほうを現実らしく経験させる。
〜すべき思考 直面しているケース(状況・状態)に関係なく、道徳的に「すべきである」「しなければならない」と期待すること。
レッテル貼り 偶発性・外因性の出来事であるのに、それを誰かの人物像やこれまでの行動に帰属させて、ネガティブなレッテルを張ること。
誤った自己責任化(個人化) 自分がコントロールできないような結果が起こった時、それを自分の個人的責任として帰属させること。

私のワーク結果(認知のゆがみ)

今度は、先ほど高い点数「4」をつけた「自動思考」について、どんな「認知のゆがみ」があるか、判定するワークをやってみました。

〜現時点の私〜
15 私にはこの先思い通りにならないことがたくさんあるだろう。 結論の飛躍
36 私は他人を傷つけてしまう。 心のフィルター
40 私は身に覚えのないことで責められている。 マイナス化思考
〜2ヶ月前までの私〜
1 私にはこの先うれしいことがないだろう。 結論の飛躍
感情の理由づけ
7 この先の私の生活は充実感のないものになるだろう。 結論の飛躍
感情の理由づけ
8 この先の私の生活は楽しくないものになるだろう。 結論の飛躍
感情の理由づけ
19 私はこの先目標を見失うことがあるだろう。 結論の飛躍
20 私はこの先人とたびたびけんかすることになるだろう。 心のフィルター

私はどうも、「結論の飛躍」傾向が強いようです。

「悲劇的な結論に一足先にジャンプしてしまう」、「先読みの誤り」のクセですね…。

今日から使える 認知行動療法』P56〜65 に、分かりやすい解説がありますので、ぜひ、ワークをしてみてください。

まとめ

本記事では、ネガティブ感情の背後にある「自動思考」について紹介してきました。

ご自分が抱えている「自動思考」に気づけば、「つらい気分、ネガティブ感情」をコントロールする第一歩を踏み出せるようになります。

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