あなたは、価値なしモデル? 愛なしモデル?|「4つのメンタルモデル」から「痛みの深層心理」を知る

心理学

悲しみ、寂しさ、怒り…。誰からも愛されず、理解もされない。私にはどうしようもない…。「ネガティブ感情や思考」をなんとかしたい、と思っていませんか?

実は、あなたの「思考・感情のくせ」を知ることが、対処の第一歩になります。

なぜなら、「思考・感情のくせ」にはいくつかのタイプ(= メンタルモデル)があり、そのタイプごとに、それらを生み出している原因・仕組みが「深層心理学」で明らかになっているからです。

その原因・仕組みが分かれば、そうした思考・感情をゆるめたり、改善したりすることができるのです。

この記事では、思考・感情のくせ、「メンタルモデル」についてご紹介します。

記事を読み終えると、ご自分の「ネガティブな思考・感情」をコントロールする第一歩を踏み出せるようになります。

深層心理に触れざるを得ない

さて、本サイトのテーマは「なりたい自分になる」ですが、そのためのノウハウとして、「引き寄せの法則」と「量子論」、「脳科学」、「心理学」をさまざまに援用しています。

どのアプローチをつかっても、「ネガティブ思考・感情の乗り越え」や「潜在意識の書き換え」が重要なテーマで、そのために、さまざまな心理療法(セラピー)が用意されています。

心理療法のうち、近年注目されているテクニック(認知行動療法、マインドフルネス、NLP など)には、「心の奥底」つまり「深層心理」には触れない、という共通の特徴があります。

自宅での実践、カウンセリングやコーチング分野への展開などを考え、「お手軽感」を出そうとすると、そうせざるを得ないのでしょう。

けれども、人間の「ネガティブ思考・感情」や「潜在意識」を対象とする以上、それらを支えている「深層心理」の成り立ちや構造を、「個々人ごとに理解する」ことがどうしても必要となります。

症状(ネガティブ感情、潜在意識)の原因(深層心理)が分からないと、処置の方法(レシピ)を決めようがないからです。

深層心理を探っていく療法がいわゆる「精神分析」ですが、セラピストとクライエントが一対一となり何度もセッションを重ねていくために、時間と費用がかかる、というネックがありました。

また、成果はセラピストの力量に大きく左右される、という弱みもありました。

ところが、精神分析の手間を大幅に軽減してくれる「画期的な方法」が登場しました!

「メンタルモデル」に着目し、まずは、「個々人の深層心理のしくみを、大まかに理解する」という方法です。

メンタルモデルとは

※本記事では、引用部分を〈〉で表します。

メンタルモデル(mental model)とは、認知心理学の用語で、〈頭の中にある「ああなったらこうなる」といった「行動のイメージ」を表現したもの〉です。[Wikipedia メンタルモデル

人間は、「Aという出来事」が起きたとき、「Bという解釈・判断→Cという行動」のように、頭の中にあらかじめ準備していた図式を使い、〈時間とエネルギーを節約する〉ように対応するのです。[Wikipedia メンタルモデル

その、「出来事−解釈・判断−行動」のパターン化された図式が、「メンタルモデル」です。

本記事では、2019年に出版された画期的な本、『ザ・メンタルモデル 痛みの分離から統合へ向かう人の進化のテクノロジー』由佐美加子、天外伺朗 著 が独自に提唱する「メンタルモデル」の考え方を紹介していきます。

Bitly

メンタルモデル

『ザ・メンタルモデル』の著者のひとりである由佐美加子氏は、「メンタルモデル」を

〈ひとりの人間の内的世界が外側の現実を創り出している〉ときの〈無自覚な信念〉

として考えています。[10章 メンタルモデルについて]

認知行動療法の「スキーマ」に相当します。

生存適合OS

そして、〈ひとりの人間の内的世界が外側の現実を創り出している〉構造、すなわち、〈現実の事象を生み出す内的世界の構造〉を、「生存適合OS」と呼んでいます。[10章 メンタルモデルについて]

OS(オペレーションシステム)とは、Windows や macOS のように、コンピュータのオペレーションを担うシステムソフトウェアですが、ここでは、「潜在意識のなかで無自覚に働く自動プログラム」の比喩で使われています。

外側で起きていること、体験していることのすべては、その人の内側にある内的世界から創り出されている、という仮説を元に、1000名を超える方々の人生に起きている現実から、どんな内的な信念や痛みを抱えているのかということを個別にひたすら紐解く体験を通して、その臨床から見えてきた構造が、この生存適合OSです。

ザ・メンタルモデル』10章 メンタルモデルについて

痛み

由佐氏は、こころの「痛み」を、〈この世界であるはずだと思っていたものがないという痛み〉と定義しています。

人間は誰もが固有の肉体を持って個として分離して存在している以上、絶対に避けられない体験があります。
それは「痛み」を感じるという体験です。
痛みはどういう時に生じるかというと、「自分の内側でこの世界に『ある』はずだと、思っていたものが外側の世界にはない」という欠乏・欠損の認識が起きる時です。[改行はサイト管理人]

ザ・メンタルモデル』10章 メンタルモデルについて

ここでいう「痛み」とは、「バーストラウマ(出生時心的外傷)」のようなものと考えていいかと思います。

バーストラウマとは、精神分析で有名なフロイトの弟子であったオットー・ランク氏が、〈出生そのものが心の傷になっている〉ことに着目して唱えた概念です。

〈生まれる前の赤ちゃんは、子宮の中でおそらく安心感に包まれていたはずですが、出産時に「窒息」「仮死」「恐怖」などを経験することで、生まれながらに精神的なストレスを受ける〉と考えたわけです。[「バース・トラウマ」とは

または、ユングが提唱した「集合的無意識」から分離する「痛み」とも考えられます。

あるいは、ユングらの流れを受けたトランスパーソナル心理学がいう〈宇宙意識との一体化、全人類の包括的意識との一体化、全物質宇宙における被造物全体との一体化、地球との一体化〉というものから分離する「痛み」とも考えてもいいでしょう。[Wikipedia スタニスラフ・グロフ

メンタルモデルが作られる仕組み

痛み−生存適合OS−メンタルモデル

さて、「メンタルモデル」「痛み」「生存適合OS」の関係をおさらいしておきましょう。

メンタルモデルは、この世界にあるはずだった何かが「ない」という[中略]欠損の痛みが言語化されたもので、
生存適合OSは、その痛みを回避して生きることを目的に生存本能が創り出した現実創造のメカニズムです。
[中略]メンタルモデルには、何がこの世界に「ない」のかという固定化された世界における欠損の「痛み」と、
[中略]あるはずだと信じていた世界を創造することへの「情熱」が表裏一体で存在しています。[改行はサイト管理人]

ザ・メンタルモデル』10章 メンタルモデルについて

上記ポイントを踏まえつつ、本書籍の全体を読み込んで図解化したものが、下の図になります(サイト管理人が作成)。

メンタルモデルが作られる仕組み

図は、右上(青い部分)→下(赤い部分)→左上(青い部分)のように見ていって下さい。

人間はこの世に生を受ける前、「宇宙」(これはサイト管理人の表現です)と一体でしたが、誕生時に宇宙から分離してトラウマを抱えます。

誕生後、しばらくは周囲の大人たちに庇護されて「世界との一体感」を維持できたものの、幼児期になり自我が芽生えると、「欠損」に気がつき、「痛み」を覚えます。

成人するにしたがい、その「痛み」を何とかしようと、一方では「潜在意識」に抑圧し、他方では「生存適合OS」を発動させ、「欠損」を言語化して(意味づけを与えて)自己を納得させます。
言語化されたものが「信念」つまり「メンタルモデル」です。

そして、「痛み」から逃れるために「回避行動」(仕事、学業、人間関係などの現実活動)が行われます。
「回避行動」は、潜在意識と顕在意識の協働で行われ、現実の「外的世界」を創り出します。
この外的世界こそ、「引き寄せの法則」がいう「あなたが引き寄せた現実世界」ということになります。

創造された(引き寄せられた)外的世界は、「欠損の痛み」から逃れる「代償行為」の成果なので、(それなりに現実に適合してはいるものの)「不本意な現実」に過ぎません。

私たちが、「ネガティブな感情」を抱いたり、「幸せ感」を感じられなかったり、そのために「幸せを引き寄せたい」と願ったりしているのは、自分で創り上げた「不本意な現実」のなかで生きているためです。

すべての人が、まったく無自覚に創り出されている、痛みの回避を目的にしたこの適合OSの中に生きています。
そして、このOSに気づかないまま生きる上で最も残念なのは、この回避行動から作り出される現実は、必ずそのメンタルモデルが創り出す「不本意な現実」であるということです。[改行はサイト管理人]

ザ・メンタルモデル』10章 メンタルモデルについて

4つのメンタルモデル

さて、個々人のバックグランドによって「信念」は異なりますが、おおきく4つのタイプ(メンタルモデル)に分かれます。( )の中が「信念」に相当するものです。

  • 「価値なし」モデル(私には価値がない)
  • 「愛なし」モデル(私は愛されない)
  • 「ひとりぼっち」モデル(私は所詮ひとりぼっちだ)
  • 「欠陥欠損」モデル(私には何かが決定的に欠けている)

以下、「10章 メンタルモデルについて」から、それぞれのモデルがどのように出来上がっているのかについて、概要を紹介します。

「価値なし」モデル

〈「自分がただありのままで存在しているだけでは、価値あるものとして認めてはもらえない」〉という痛みを抱えています。

そして、〈他の人に対して価値を出せなかったら自分はここにいる価値はない〉という信念を持っています。

回避行動は、たとえば会社組織の中で、自分の価値を証明するために周囲の期待に応え続け、業績アップのために頑張り続ける、といった克服型のものが典型です。

「愛なし」モデル

〈自分は愛されなかったという欠損〉から、〈自分が求める愛はない、自分は望む形で愛してもらえない〉という信念を抱いており、〈恒常的な「寂しさ」を抱え、人との一対一の深いつながりに対する渇望感と恒常的な不安があります〉。

〈自分を愛してもらうためにひたすら相手に奉仕するという形で、自己犠牲的に愛を与えようとする〉のが、典型的な回避行動です。

「ひとりぼっち」モデル

〈絶対的にひとつにつながっているはずだったのに引き離される、という「分離の痛み」を抱え〉、〈所詮つながりは断たれるものだ[中略]という割り切りの感覚と、どうせ自分はこの世界にひとりで生きているんだ、という独特の「孤独感」を持って生きて〉います。

分離の体験を回避するために、〈人にそもそもあまり入れ込まない、[中略]相手が自分の元から去っていくと感知したら、自分から先に相手をうまく切り離す〉行動をとります。

〈自分の信念に従って新しい世界観や価値観を打ち出したり、パイオニア的な役割を果たしていること〉が多いのも、このモデルの特徴です。

「欠陥欠損」モデル

〈自分はどこか出来損ないだ、人とは何かが決定的に違う、補えない欠陥を持って生まれてきてしまった〉という信念を持っています。

自分はどのメンタルモデルなのか?

「11章 自分のメンタルモデルを見つける意味」に、 メンタルモデルの「見分け方」がありますので、かんたんに紹介します。

  • 「価値なし」モデル: 大きな組織の管理者に多いタイプ。「それは意味があるのか?」が口癖。〈「優秀そう」「ちゃんとなんでもできそう」という〉在り方をしています。
  • 「愛なし」モデル:幼児期に、親との関係性(男性はとくに母親との愛情関係)が欠損しており、「自分が望む形で愛情をかけてほしい」欲求が満たされないまま大きくなっていることから、〈年齢に関係なく、在り方にどこか子供っぽい純粋な要素〉があります 。
  • 「ひとりぼっち」モデル:個性的でユニーク、人と違うこだわりの服を着ていたり、人の目を気にしたりせず、我が道を行く、一匹狼タイプ。 「みんな好きにしたらいいよ」が口癖。
  • 「欠陥欠損」モデル:〈どこか影があるような、はかなげで繊細な印象〉を漂わせています。

だれでも、4つのモデルの要素を少しずつ持ちながらも、最終的には必ずいずれかのモデルに当てはまる、というのが由佐氏の考え方です。

が、私の場合はさんざん考えた結果、「愛なし」と「ひとりぼっち」のハイブリットだという結論に、いまのところ落ち着いています。

ハイブリッドモデルの場合、2種類の現実世界を創り出しているので、普通のひとの2倍のエネルギーを消費しています。

これらに加えて、2つの信念の対立・葛藤に悩むこともしばしばです。

むちゃくちゃ疲れるわけですが、「2倍の人生を謳歌しているのだ」と、ポジティブに捉えるべきなのかもしれません。

「痛み」をどう乗り越えるか?

ネガティブ思考の元型は、4つの信念

さて、自分のメンタルモデルが分かったとします。

では、もともとのテーマである「ネガティブ思考や感情」をなんとかするには、どうしたらいいか?

「感情」を生み出すのは、「思考」です。
そして、「ネガティブ思考」の元型は、いままで見てきたような4つの信念、つまり、

  • 「私には価値がない」
  • 「私は愛されない」
  • 「私は所詮ひとりぼっちだ」
  • 「私には何かが決定的に欠けている」

です。
別稿で紹介した「ネガティブ思考・18例」も、4つの信念のどれかに当てはまります。

信念は「分離」状態の産物

これらの「信念」は、分離の「痛み」を感じないために、思考の力で言語化したもの、つまり、痛みを言語という「ベールで覆ったもの」です。

痛みが出てこないように、覆っているのです。
でも、「宇宙」から「分離」している状態は変わらずに残っています。

本書『ザ・メンタルモデル』では、痛みが出てこないように信念で覆って(言語化して)、生活を営んでいる状態を「適合期」と呼んでいます。
「不本意な現実」を創り出しながら、なんとか「適合」している時期という意味です。

本稿を読まれているほとんどの方は、この「適合期」にいる状態です。

いずれ「直面期」がやってくる

しかしながら、「不本意な現実」がエスカレートすると、いずれ、破綻します。
学業の失敗、事業の破綻、大事なひととの離別、健康の悪化・病気など、ひとそれぞれですが、人生で起きるこのようなイベントは避けようがありません。

むしろ、自らが「不本意な現実」として「引き寄せた」結果として、顕在化するのです。

本稿を書いている私はまさに今、「直面期」に置かれています。

そして「自己統合期」を迎える

幸いにして、本書には、4つのメンタルモデルごとに、「分離から統合へ」向かうための指針が示されています! ぜひ、本書を読んでみることをおすすめします。

とくに、「分離から統合へ」向かう様子を描いた著者の「自分史」は圧巻です。
「12章 由佐美加子のライフ・タペストリー」「13章 天外伺朗のライフ・タペストリー」の部分です。

まとめ

本記事では、「宇宙からの分離の痛み」を回避するための思考・感情のくせ、「メンタルモデル」について紹介してきました。

ご自分の「メンタルモデル」が分かれば、「ネガティブな考え・感情」をコントロールする第一歩を踏み出せるようになり、さらには、「自己統合」にいたるための道筋が明らかになります。

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