ネガティブ思考、ネガティブ感情をなんとかしたい、と思っていませんか?
実は、自分のなかにある「ネガティブな考え・感情」をぜんぶ書き出してみるのが、第一歩になります。
なぜなら、書き出すことによって、潜在意識に溜まっているネガティブ思考・感情を顕在意識にひっぱり出してしまえば、「あと処理」が可能になるからです。
マインドフルネスやNLPの方法を使えば、潜在意識の「書き換え処理」ができるのです。
この記事では、「ネガティブ思考・感情」のサンプルをご紹介します。
記事を読み終えると、サンプルを見ながら自分で「ネガティブな考え・感情」を、どんどん書き出していくことができるようになります。
「考え」と「感情」は連関している
思考−感情−行動のつながり
「考え(思考)」と「感情(気分)」は、密接に関係しています。
ネガティブな考えは、ネガティブな感情を生み出し、逆もまたしかり、です。
そして、ネガティブ感情は、ネガティブな「行動」を生み出します。
また、「行動」の前には、予兆として「身体反応」が発生します。
これら4つ、「考え」「感情」「身体反応」「行動」の関係を描いたものが、下の図になります(サイト管理人が作成)。
この図は、「認知行動療法(CBT)の基本モデル」と言われています。
マインドフルネスの本などによく登場するだけでなく、NLP(神経言語プログラミング)や、「引き寄せの法則」を理解する上でも、とても役に立つスグレモノです!
ぜひ、使い回して下さい!
なお、マインドフルネス(Mindfulness)の「マインド Mind」とは、図にある「考え・思考 Thoughts」「感情・気分 Feelings」とはまったく別の意味で使われています。
「考え」や「感情」のどちらでもなく、これらを見守る「心」や「気づき」と考えればいいかと思います。
では、図の説明をしていきます。
たとえば、「今日はテストの日!」という状況が発生したとします。
すると、上図のように、
- 「ミスするに決まってる。」といった「考え」が生まれ、
- 「めちゃくちゃ不安…」な「感情」が引き起こされ、
- 「お腹が痛い」という「身体反応」が起き、
- 「ズル休み」という「行動」に至ります。
それぞれの定義は、次のようになります。
[東京大学医学部附属病院 精神神経科「入門!認知行動療法 こころのしくみ」より]
- 考え:断言文で表せるもの。最後は「〜だ」「〜べきだ」「〜だろう」などとなる。例えば、「友達が自分のことを嫌っている」など
- 感情:ひとつの単語で表せるもの。例えば、「喜び」「悲しみ」「怒り」など
- 身体反応:自然と生じる体の変化。例えば、涙が出る、手が震える、動悸がするなど。
- 行動:自分の意思で行っている動作。例えば、逃げる、走る、食事をするなど。
認知行動療法
さて、認知行動療法(CBT : Cognitive Behavior Therapy)というのは、行動療法と認知療法を合体させた療法で、「うつ病」「PTSD」「パニック障害」などの治療では薬物療法と同等の効果があるといわれ、保険適用を受けている療法です。
今話題の「マインドフルネス認知療法」、「アクセプタンス&コミットメント・セラピー(ACT)」は、この認知行動療法の第3世代といわれています。
下の図を見ていただくと分かるように、「認知行動療法」は、数ある療法(セラピー手法)のなかでも、ど真ん中に位置しているのです。
ここから先は、「思考」「感情」「身体反応」の例を紹介していくことにします。
ネガティブ思考
自動思考
先ほどは、「今日、テストがある」という出来事が引き金となって連鎖を起こすシンプルな例でしたが、もっとリアルな(実際にありがちな)事例を紹介します(下表)。
[岩手大学教育学部附属教育実践総合センター研究紀要 第14号 451−459,2015『認知行動療法の理論と基本モデル』塚野弘明 より]
出来事 | 自動思考 | 感情・行動 |
母親から電話があり、なぜ姉の誕生日を忘れたのかと問いただされる | またやってしまった。人を思う気持ちが足りないんだ。いつも母を失望させてしまう。どうせ何をやってもダメだ。 | 悲しみ、怒り 食欲がない外出する気にならない |
締め切りが迫っている大きなプロジェクトについて考える | 私には荷が重すぎる。期限に間に合わせることなど不可能だ。上司に顔向けできない。仕事を失うかもしれない。 | 不安 会社に足が向かない眠れない |
夫からいつもイライラしていると不平を言われる | 夫は私に心の底から嫌悪感を抱いている。私は妻として失格だ。何をやっても楽しくない。私と一緒にいるとみんな不幸になる。 | 悲しみ、不安 家事をやる気がない買い物に行けない |
表の真ん中の列をご覧ください。
- 「人を思う気持ちが足りないんだ」
- 「どうせ何をやってもダメだ」
- 「何をやっても楽しくない」
- 「私と一緒にいるとみんな不幸になる」
すべて「断言文」ですよね。
いわゆる、信念、思い込み、固定観念、先入観、考え方の癖… です。
基本モデルでは、「考え、思考 Thoughts」と表現しましたが、この表では「自動思考」と呼ばれています。
同じような出来事に遭ったとき、このように「パターン化された思考」が自動的に立ち上がるので、「自動思考」と言うわけです。
この「自動思考」の背後にある価値観や信念を、心理学では「スキーマ Schema」と呼びます。
スキーマに着目してネガティブな感情や行動を減らして、こころの回復力を取り戻すことを目指す療法を「スキーマ療法」(Schema Therapy)といいます。
ネガティブ思考・18例
検索していたら、とても良い情報がありました。下記の論文です。
[大阪経大論集・第68巻第6号・2018年3月『慢性化した抑うつ症状を訴える男性に対する統合的認知行動療法―スキーマ療法を併用した症例報告―』佐野正剛]
「抑うつ」とは、「気分が落ち込んで活動を嫌っている状況であり、そのため思考、行動、感情、幸福感に影響が出ている状況のこと」を言います。[Wikipedia 抑うつ]
本記事でいう「ネガティブ思考」とは、「幸福感に影響を与える思考」ですので、この論文を参考にしたいと思います。
さて、スキーマ療法の開発者のひとり、ジェフェリー・ヤング(Jeffrey E. Young)は、スキーマには大きく分けて5種類ある、と考えています。
これを、5つの「スキーマ領域(Schema domains)」といいます。
そして、小分類として18個あります。
18スキーマのひとつひとつが、「パターン化された思考」、つまり、もともとのテーマである「ネガティブ思考」の例、ということになります。
これらがすべて、この論文に書かれているので、ご紹介します。
多少表現を変えてあります。
また、「⇒」に続く部分は、「私は◯◯だ。」のかたちに変えたオリジナルの文です。
断絶と拒絶:第1領域
他者や自己に対する基本的な信頼感が形成されず、生きること自体がつらい。
1.見捨てられ/不安定スキーマ
他人との関わりが不安定で常に見捨てられ不安がある。
⇒私はひとと関わるのが苦手で、見捨てられるのがいつも不安だ。
2.不信/虐待スキーマ
他人は全て自分をいじめ、食い物にするような虐待者で全く信用できない。
⇒私はいつもいつもいじめられているので、他人はまったく信用できない。
3.情緒的剥奪スキーマ
自分は誰からも愛されず、理解もされず、守ってもらえない存在だ。
⇒私は誰からも愛されず、理解もされず、守ってももらえない。
4.欠陥/恥スキーマ
自分は人間として欠陥のあるダメ人間で、そのような自分の存在が恥ずかしいと感じている。
⇒私は欠陥だらけのダメ人間で、そんな自分が恥ずかしい。
5.社会孤立/疎外スキーマ
自分は人と違っており、孤立した存在と感じる。
⇒私はひとと違っていて、孤独だ。
自律性と行動:第2領域
しっかりとした自分、自発的に動ける自分という感覚が形成されず、自信を持って能動的に生きることが難しい。
6.依存/無能スキーマ
日常生活において自分は無能であり、他者からの助けがなくてはまともに生きていけないと感じている。
⇒私は無能人間で、ひとに助けてもらわなければ、まともに生きていけない。
7.損害や疾病に対する脆弱性スキーマ
今にも破局的な出来事が起こり自分はそれを防いだり、対処できないと思う。
⇒今にも大変なことが起きそうだけど、私にはどうしようもない。
8.巻き込まれ/未発達の自己スキーマ
自分が他者(親)に感情的に巻き込まれており、あたかも他者(親)と一体化しているかのように感じている。自分がないと感じ、自らのアイデンティティを感じる事ができない。
⇒私は他人(や親)の言いなりになっていて、自分らしさを感じられない。
9.失敗スキーマ
自分のしてきた事は、失敗だらけだ、何をやっても失敗するだろう、と思い、自分を失敗者だと思う。
⇒私の人生は失敗だらけで、自分は失敗者だ。
他者への追従:第3領域
自分の価値や行動は他人次第という感覚が形成され、自分の欲求や判断より他者のそれを優先して生きている。
10.服従スキーマ
他者に見捨てられたり、報復されたりしないためには自分の欲求や感情を犠牲にして他者に服従するしかない。
⇒見捨てられたり、仕返しされるのが怖いので、私の欲求や感情は犠牲にするしかない。
11.自己犠牲スキーマ
自分より他者を優先し、他者の欲求や感情を満たしたり癒やしたりすることに過度にとらわれる。
⇒私のことはどうでもよく、他人の欲求や感情こそ大事。
12.評価と承認の希求スキーマ
他者から評価されたり承認されたりする事にとらわれ、他者の評価によって自尊心が左右され、他者の評価を得るために自らの行動を選ぶ。
⇒私は、ひとから良く思われていたい。ひとに認めてもらえないと不安だ。
過剰警戒と抑制:第4領域
この世は悪いことだらけ、喜びや遊びは後回し、感情より理性を優先、という感覚が形成され、いつも気を張って悪いことが起きないように過剰に警戒して生きている。
13.否定/悲観スキーマ
人生のネガティブな面ばかりを過大に注目し、ポジティブな面を無視する。マイナス思考にとらわれ、いつも心配ばかりしている。
⇒私はものごとの悪い面・暗い面ばかり気になって、いつも心配ばかりしている。
14.感情抑制スキーマ
感情を感じたり表出したりする事を恐れており、自らの感情を押さえ込んだり、あたかも感情がないかのように振る舞ったりする。
⇒私は自分の感情を表に出すのが恐い。だからいつも仮面を被り、クールに振る舞っている。
15.厳格な基準/過度の批判スキーマ
非常に高い基準を自分や他人に対し求め、人は努力するべきと思う。
⇒私はいつもレベルアップできるように頑張っている。周りにもそうしてもらいたい。
16.罰スキーマ
失敗を許せない。自分や他人を簡単に許す事ができない。
⇒私は、自分であれ他人であれ、失敗を許せない。
制約の欠如:第5領域
嫌なことはやりたくない、という感覚が形成され、協調性がなく我慢ができない。
17.権利欲求/尊大スキーマ
自分は他者と違って特別な存在であり、特権と名誉が与えられて然るべきと信じている。他者より優位に立つこと、ルールにとらわれず自分のやりたいようにすることに過大な価値を置く。
⇒私はひととは違う特別な存在なので、特権や名誉が与えられて当然だし、いつだって、やりたいようにさせてもらう。
18.自制と自立の欠如スキーマ
欲求不満耐性が非常に低く、自らの欲求や衝動を制御したり、目標に向けて計画的に自分を律したりすることができない。
⇒私は目標に向かってやりたいことを我慢したり、カッとなるのを抑えたりできない。
上の18事例はあくまでも参考事例に過ぎません。
ひとが抱くネガティブな思考は、18パターン程度には収まりきりません。
とはいえ、100パターン以内には収まるだろうと思っています。
今後、追記していく予定です!
今の時点では、上記を参考にして、ご自分の人生を振り返り、普段、どのような「ネガティブ思考」を抱えているか、どんな「思い・信念」でこれまで生きてきたか、ぜひ、ワークしてみてください。
ネガティブ感情
感情とは、「ヒトなどの動物がものごとや対象に対して抱く気持ちのこと」です。[Wikipedia 感情]
ネガティブ感情・48例
Wikipedia には「感情の一覧」というページがあります。
そこから、「ネガティブな感情」を若干アレンジしながら転記すると、下のように、48個になります(登場順)。
不安 焦燥 困惑
緊張 恐怖 後悔
不満 無念 嫌悪
恥 軽蔑 嫉妬
罪悪感 殺意 劣等感
怨み 苦しみ 悲しみ
切なさ 怒り 苦悩、懊悩、煩悶
諦め 絶望 憎悪
空虚 情緒不安定* 被害者意識*
心配* イライラ* 倦怠感*
無価値感* 強欲* 欠乏感*
落胆* 意気消沈* 失望*
敵意* ヒステリー* 重圧感*
激昂* 寂しさ* 憂鬱*
残念* 拒絶* 呵責*
羞恥* 人見知り* 葛藤*
なお、サイト管理者にて23個を追加してあります(*印のあるもの)。
「ネガティブ感情」を日本語で表現した単語としては、ほぼ、網羅されていると思います。
あなたが「ネガティブ思考」を抱いているとき、どんな「ネガティブ感情」が起きているか、ぜひ、ご自分でワークしてみてください。
身体反応の例
最後に、「身体反応」の例を、東大病院のサイトから転載させて頂きます。
[東京大学医学部附属病院 精神神経科「入門!認知行動療法 こころのしくみ」より]
この表を参考に、例を挙げてみます。
涙が出る だるい 身体が重い
がくがくする 動悸がする 呼吸が速くなる
体が力む 口が渇く めまいがする
震える 目をそむける 顔が赤くなる
汗をかく どもる 頭が真っ白になる
体をゆする 鼻がツーンとする
こんなところが、一般的な「身体反応」でしょうか。
「ネガティブな思考・感情」が起きるとき、どんな「身体反応」が出るか、ご自分で観察してみて下さい。
まとめ
本記事では、ネガティブ思考・18例、ネガティブ感情・48例を紹介してきました。
サンプルを見ながら、ご自分で「ネガティブな考え・感情」をどんどん書き出していくことが、「気づき」につながり、「潜在意識」を書き換える第一歩になります。
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